50年前からリリースされ続けている単行本を買ってみた。ことのついでにDVDも見てみた。 - I'VE SEEN THE FILM, I'VE READ THE COMIC -
秋田書店の「SUNDAY COMICS」といえば、1966年から数多の作品を世に出してきた名門レーベルです。コアなファンも多く、いわゆる、“レーベル買い”の対象にもなっているブランドのため、「SUNDAY COMICS」の全作品を収集しているコレクターも存在します。
漫画雑誌を刊行している出版各社が、まだ自前の漫画単行本用のレーベルを持っていない(つまり自社から単行本をリリースしない)頃から作品を刊行していた経緯もあって、秋田書店以外の出版社が版元である作品の割合が多いのが特徴ですが、もう一つ大きな特徴があります。
それは、全部の作品ではないものの、絶版されずに、非常に長い期間にわたって入手可能な状態を維持している、という点です。
「SUNDAY COMICS」に限らず、秋田書店の書籍は全体的に絶版になることが少ないです。一説では、自社で倉庫を持っていて、在庫管理がきちんとなされているため、会社の方針として極力絶版にさせないようにしている、と言われています(ただし、絶版ではないものの、“品切れ/重版未定”という状態で、事実上は絶版と同じく入手不可能な書籍は多く見受けられます)。
では、実際に「SUNDAY COMICS」で一番長い間入手可能な状態にあるコミックスは何かというと、栄えある第1弾刊行作品の「サイボーグ009」1巻です。秋田書店のサイト内にある企業沿革によると、1966年7月に刊行開始とあるので、もう52年も前の本です(こちらの沿革では、「サンデー・コミックス」と表記されていますが、本コラムでは小学館の「少年サンデーコミックス」との混乱を防ぐために「SUNDAY COMICS」で統一しています。)
そもそも、「SUNDAY COMICS」自体が、「サイボーグ009」のリリースありきで企画された側面があり、蓋を開けてみると、「サイボーグ009」のコミックスは、同レーベル、ひいては当時の秋田書店の屋台骨を支えるほどのドル箱商品となりました。
そのような、「SUNDAY COMICS」を代表するコミックスを、半世紀以上経った今になって、否、今だからこそ買い求めてみましょう。
Amazonには潤沢に在庫があり、注文した翌日に届きました。
開封してみると、おなじみのあの装丁がお出ましです。
奥付のほうを確認してみましょう。
なんと、キリよく第100版目でした。やはりすごい数を刷ってますね。
ところで、初版発行の日付が「昭和41年7月15日」となっています。先ほどの沿革でも「1966年7月」となっていたので、何の不思議もないように思われますが、この部分の日付は、通例として1~2か月程度前倒しされているので、実際の発売日は、1966年の5月から6月あたりなのかもしれません。Amazonの商品ページでの発売日は「1966年7月1日」となっていますが、2週間程度の前倒しというのはちょっと短すぎて不自然です。とはいえ、この当時は現在と違ってそれくらいの前倒しの間隔だった、という可能性もゼロではないので、これだけでは正確なところはわかりません。
内容のほうは、ネタバレにもなるし、そもそもこの名作中の名作を今さらくどくどと説明するまでもないでしょう。
さて、こうなると、アニメのほうも見たくなるのが人情というもの。TVシリーズは初期モノクロ版もリメイク(“誰がために”)版も見たことがありますが、劇場版はまだ見たことがありません。
そこで、TVシリーズよりも先に放映された劇場版第1作を見てみることにしました。
003の声は、プロパーの声優ではなく、なんと、ジュディ・オングが演じています。しかし違和感はないどころか、むしろハマり役と言っていいほどしっくりきています。
どちらかというと低年齢層向けに作ってあるにもかかわらず、根底にある「反戦」「平和」といったテーマに、「ハッ」とさせられる場面もあります。
話をコミックスに戻すと、今回紹介した「SUNDAY COMICS」については、50年以上前にリリースされた本が、古本ではなく現行商品として手元に届くという、なんともゴキゲンな体験ができました。初版のみで絶版になってしまう本が山ほどある昨今においては、これぞ出版界の鑑、といっても過言ではありますまい。
ところで、「SUNDAY COMICS」版の「サイボーグ009」は全15巻が刊行されていますが、これで全てのエピソードが読めるわけではありません。「サイボーグ009」は石森章太郎のライフワークとして、晩年まで様々な媒体に掲載されたため、秋田書店以外の出版社からリリースされたコミックスにしか収録されていないものもあります。
時代が下った今は「全集」や「完全版」という形で全部を網羅していますが、ボリュームや価格の面からおいそれと手が出せない、と二の足を踏んでしまうこともあるでしょう。それに、単なる網羅性というだけでなく、「あのコミックが出ていた頃の時代性」というものも含めて、特定のレーベルのコミックを読んでみたくなる、という人もいると思います。
「まんがseek」では、作品データの「商品情報」という形で、あらゆるコミックスを可能な限り紹介しており、リンクをたどって購入することができますので、ぜひご活用ください(“商品”情報なので、絶版のコミックスについては、中古商品として提供しているリンク先がない場合には紹介できないこともあります)。
サイボーグ009の作者、掲載誌、収録コミックスなど | まんがseek(漫画データベース)
ジョー! きみは どこからよみたい?
(文中敬称略)
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